モトヤ隷書4・6 発売記念!原田幹久先生インタビュー
書家で「モトヤ隷書」の監修者でもある原田幹久先生にお話を伺いました。

 

原田幹久先生 プロフィール

書道家。日展会友。読売書法会理事。元九州女子大学教授。花園大学・仏教大学講師。
藝術文化交流会理事。書学書道史学会会員。(株)モトヤ顧問(文字制作)。

1954年 福岡県生まれ。大東文化大学中国文学科書道専攻卒。
栗原蘆水師事。1980年日展初入選以来,書の研究を続け現在に至る。


映画やTV、CM等の題字を担当するほか、朝日新聞でのコラム「漢話百題」を連載するなど
精力的に活動している。「こころに響く儀礼の書」(日本習字普及協会)ほか著書多数。



モトヤ文字制作の顧問として

 

モトヤとの出会いについてお聞かせください。
 もう25年ぐらい前になります。書を通じてモトヤの故大本義秀君(書体デザイナー)と知り合いました。彼は非常に論理的にしっかりとした文字に対する思い入れが強く、毛筆で書いた書体をフォントにして、広く世間に普及したいという考えを持っていました。それがモトヤの文字制作の顧問として関わる契機となりました。
 私自身、一般のフォントに対して書的におかしいのではないかと感じることは多かったので、変えられるところは変えようという話で盛り上がっていました。
 
書とフォントの関係をどのようにお考えですか。
 まず書とフォントの違いを言わなければなりません。書の場合は筆・墨・紙の種類もそれぞれ色々とあり、選択肢の幅がたくさんあります。それとは逆にフォントは誰が見ても確実に伝わっていかなければいけないという面での厳しさがあります。
 書は自分を出していきながら理解を求める一方、フォントはまず万人に受けるためには何をする必要があるかを考えなければなりません。例えば家を建てる場合、良い材料を使っているから倒壊しないのではなく、材料の特性や構造を理解しておく必要があります。文字も同じで、形と筆づかいがバラバラだと良い文字とはいえません。
 そのためには書を通じて文字の形やバランス、構造などをしっかり踏まえておくことが大切です。

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モトヤの筆文字書体は文字の構造性をよく理解して制作されている

 

今回、発売された「モトヤ隷書4・6」についてお聞かせください。

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 「モトヤ隷書2」は、私が書いた書を元字に開発されたフォントです。今回、ウエイトの太い「隷書4・6」が発売された訳ですが、偏と旁の組み合わせにおいても画数の違いによる文字の濃淡を感じさせないように空白の取り方が工夫されており、安定感につながっています。文字の重心について、楷書は中央で、行書は少し右寄りなのに対して、隷書では左寄りになります。その重心の移動の比率に関しても当初の意図どおり良く反映されていると思います。

 また、他社の隷書のフォントでは漢字に対して仮名が大きく感じることが多いのですが、モトヤの隷書は漢字と仮名の大きさの比率も良い印象を持ちますね。
 読みやすく、なお且つインパクトを持っている書体なので、本やパンフレットの題字などに適していると感じます。

 

 
モトヤの隷書を開発された際にどのようなことを注意しましたか?
 モトヤの隷書を制作するにあたって、その骨格は正方形の造形でできている「張遷碑」を基にし、逆に線質は、スマートで線の美しさを表現しながらも優しい感じがする「曹全碑」を参考にしています。両方の良い面を組み合わせて制作しているのです。
 仮名の制作にも多くの時間を費やしました。もともと隷書にはないものですからね。隷書の場合、漢字は直線だけで構成されていて、曲線がほとんどなく、あってもわずかです。だから平仮名は曲線的な要素を取り入れたいのですが、そうすると両者の調和が取れなくなる。したがって隷書を書体全体で見たときに曲線が極端に少なくなってしまい、温かさや優しさをどう表現するかが難しくなりました。そこで、線の太さを変えながら、直線的にも見えるし曲線的にも見えるように工夫しました。

 隷書は他の書体と違い横線を強調していきながら書くので、横組みに向いていると言えます。逆に楷書や行書は一般的に横組みには向いていませんが、縦に組んでも横に組んでも読みやすくするのがフォント制作の手法です。モトヤとの文字制作の中で、文字の形や大きさ・寄り引きなどの調整について随分と議論を繰り返しました。モトヤの毛筆書体が優れているのはそのためです。



(写真右:張遷碑)
(写真右下:曹全碑) 
※共に、掲載しているのは作品の一部分 
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原田先生によって書かれた元字(隷書2)。
元字から制作された印画紙。

 


 

文字制作や監修について

 

話題のゲームソフト「DS美文字トレーニング」も監修されたそうですね。
 本来は自分ひとりで学ぶ「書」というものを、友人や家族とともに輪になって、会話しながら学べるということが、一つの役目としてできたらいいなという思いがありました。今回の監修作業では、お手本になる文字を私が書き起こしました。また、文字を美しく書くための添削コメントの監修なども担当しています。

 先日、ある小・中学校で硬筆の授業に筆順と文字のお手本に『DS美文字トレーニング』を活用しているという話を聞きました。そういう意味では良いところで予想外の展開が起こっていて、監修に携わったものとして嬉しく思います。

(※弊社では「DS美文字トレーニング」において、原田先生が書かれたお手本文字のデジタルデータ化に協力しました。)

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文字は、永く使ってもらいたいという「想い」が大切

 

最後に、文字に対する「想い」をお聞かせください。
 私は実家が本屋ということもあって、父も存命のころは日に10冊と本を読んでいた身ですが、「ここの活字は良いなあ」とモトヤの活字を評していたことを思い出します。
 文字の形を美しく書くということはもちろん大事ですが、字源を理解して、文字の意味から形が決まっているということを踏まえておくことが大切です。書からフォントに応用できるところはまだまだありますし、同時にそれは私たちもこれから学ばなければいけないことだと思います。
 文字というのは、ただ技術の競争に終始するのではなくて、やはり永く使ってもらいたいという「想い」が大切であり基本です。その想いは、書家である私にとっては書に向けられ、モトヤであればフォントに向けられます。
 これからも、協力して良い書体を制作していくことを楽しみにしています。


-本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

 

【収録日:2008年9月22日 モトヤ大阪本社に於いて】
 聞き手:モトヤ大阪本社技術部

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