活字資料館

株式会社モトヤ大阪本社では、「活字資料館」として、創業(大正11年)から平成8年まで営んでおりました鉛活字の製造や組版作業の様子を始め、今も引継がれるフォントデザインの過程を常設展示いたしております。資料館についてのお問い合わせは大阪本社までお願いします。

<活字資料館開設にあたって>

平成8(1996)年7月31日、創業以来75年間にわたって共に喜び、共に苦しんできた「活字」との別れの日を迎えた。
このことは、後退を告げるものではない。社是「顧客と共に栄える」を標榜し、21世紀に向け、100周年に向け、さらには永遠に歩み続けることを誓って、力強く、新たな一歩を踏み出したことを意味している。まさに、モトヤがコンピュータ時代に対応して、「アナログ」の世界から訣別し、「デジタル」の世界で生きることを宣言した記念すべき日である。
しかし、アナログの世界を無視するのでなく、むしろ、そこで培ってきた知識をベースにして、そこから新しいデジタルの世界を築いていくのでなければならない。その関わりの中に明日の糧となるものがある。当資料館を開設した所以である。

展示のご案内

ベントン彫刻機

明治17(1884)年、アメリカのベントンによって発明された母型製作用の彫刻機です。
この彫刻機が発明され普及するまでは、文字を直接金属(鉛)に手彫りして種字を作り、電鋳法で母型(電胎母型)を製作していました。
高い精度を持ったこの彫刻機が発明されたことで、設計された書体が忠実に母型材(マテ)に彫刻再現されるようになりました。それにより、文字の構成要素を科学的に分析し、整合性を持った書体の設計が可能になりました。
戦後の昭和23(1948)年、津上製作所が初めてベントン彫刻機の国産化に成功し、当社はいち早くこれに着眼して、昭和24(1949)年に4台導入。従来の手彫刻を一掃して機械彫刻に切り替え、昭和30(1955)年代の最盛期には20数台を設備して、自社用母型製作と共に印刷会社向け母型の販売・普及に努めました。

活字の製造工程

彫刻機テーブル上にセットされたパターン(亜鉛板)
パターン上の文字をなぞっていくことにより、母型材に彫刻されますが、彫刻する文字の大きさは、パンタグラフの原理で自在に変えることができます。

母型
活字鋳造用で主に真鍮材でできており、大別すると次の3種類です。
①電胎母型:電気鍍金を応用して製作するもので最も歴史が古い。
②彫刻母型:原字(書体)を最も忠実に再現することのできる母型。
③パンチ母型:打抜法で製作するもので、同一文字を大量生産するために開発された。

活字鋳造機
1888年に米国・ヘンリー・ノマースが自動鋳造機を発明後、トムソン社製に至って近代的な鋳造機の形態を示しました。日本では、林栄社、日本タイプライター、八光などのメーカーが次々と高性能機を開発し、販売を行うようになりました。

活字
「活字」は活版印刷の主役とも言うべきものです。活版活字は鉛合金で出来ており、その成分は鉛・錫・アンチモニーであり、融点は300℃前後です。
また、タイプレス活字は、タイプバーで咥えて、プラテンに印字するために強度が必要となるので、亜鉛・アルミニューム・銅の合金であり、融点は420℃前後です。

活字に代わる組版機器

S46.5 タイプレスP型発売。ポイント制を採用し、プラテンはB4用紙横置きに対応しました。

S51.8 電動タイプレスEE発売。業界初の電動化に成功し、印字圧も5段階のIC制御を採用しました。

S55.2 電子組版機MT-5000発売。8ビットマイコンを搭載し、均等割りなどの演算機能を持たせました。

S57.7 電子編集組版機WP-6000発売。九州松下電器と共同開発を行い、ワープロの長所を取り入れました。

S60.2 電子編集組版システムLASER7発売。活字から508dpi(または1,016dpi)のレーザー出力になりました。

S63.7 電子編集組版システムLASER7 EX発売。低価格施策により、販売量で業界シェアNo.1となりました。

各種見本帳や原字

明治~昭和30年代までの国内外の貴重な見本帳を中心に、かつてモトヤが輸出していた東南アジア各国の活字のデザイン原字シートを展示しています。